
チャーユーさん、最近気づいたんだけど。

はい、何でしょう!

コーヒーって、苦くないものもあるんだね。

QQ泣
そうなんです、そこにやっと気づいてくれましたか!
もちろん産地や品種によっても違うのですが、どんなコーヒーも、浅煎りにすれば苦味はほとんどありません。
逆に「サードウェーブ(スペシャリティ)コーヒーは酸っぱい」とよく言われますが、同じ豆を深煎りにすれば、普通に苦いし酸っぱくないです。
「サードウェーブコーヒー屋さんと喫茶店って何が違うの?」って思ったことはないでしょうか?もちろん文化背景などは色々と違うのですが、単純にコーヒーとして一番違うのは、焙煎の深さだと思っています。
この記事では、焙煎度の観点から、味わいの違いやコーヒーの選び方についてお話しできたらと思います。
焙煎度についての前提
焙煎度ってなに?

さっきから当たり前のように単語使ってましたが、浅煎り・中煎り・深煎りって聞いたことありますかね?
文字通りなんですけど、「煎りが浅い」浅煎りは、焼き加減が弱めで、見た目でいうと黄土色や茶色っぽい色をしていたり、豆の表面にシワがはっきり出やすいのが特徴です。
逆に深煎りは焼き加減が強く、かなり黒に近いこげ茶色をしています。表面に油が浮いていたりするのも見た目の大きな特徴ですね。
ステーキでいうと、浅煎り:レア、中煎り:ミディアム、深煎り:ウェルダン、的な感じだと思えばわかりやすいかもです。同じ肉を使ったとしても、焼き加減で口当たりや味が大きく変わりますよね。焼き加減を弱めにすれば、素材本来の味が味わえるのに対し、ガッツリ焼くと安定した香ばしい風味が楽しめる。コーヒーも同じです。
ただステーキと違うのは、コーヒーは浅煎りであっても、中に火が通っていないということはありません。火が通ってないコーヒーは「生焼け」と言われ、草や穀物のような魅力的じゃない香りを引き出します。もちろん火を入れる時間が短い浅煎りの方がこの失敗は起こりやすいのですが、深煎りでも生焼けは起こり得ます。中までちゃんと火を入れた上で全体の焙煎度をコントロールするのが焙煎士の仕事なので、もし浅煎りを頼んだら草っぽかったという経験がある人は、ぜひ別のお店で浅煎りをトライしてみるのもいいかもしれません。
また焙煎度ですが、英語で書かれていることもよくあります。
ライト・シナモン・ミディアム・ハイ・シティ・フルシティ・フレンチ・イタリアン、と。(ただ言ってる人によって若干ずれたりするので、厳格な定義はよくわからないです。。)
シティってなにって感じですよね。これ実はNYC(ニューヨークシティ)って意味だそうで、NYでの一般的な焙煎度(昔の話)を表しているようです。そして途中から国の名前になっていくという。。
分かるかもですが、ライトの方が浅くて、イタリアンが深いです。イタリアはエスプレッソ文化なので、苦いコーヒーをよく飲むから深いんだ、ぐらいに思っていただければいいかと思います。
焙煎度で選ぶ、というのが実は一番おすすめ
もう一つ重要なことなのですが、焙煎度によって、コーヒーの味は劇的に変化します。
もちろんコーヒーは、農園、品種、焙煎、抽出などさまざまな要因によって変化をするのですが、その中でも特に焙煎度は、飲む側にとって最大のインパクトを与えると私は思っています。

えーでも僕は、焙煎度っていうか産地で選ぶことが多いけどなぁ。ブラジルとかすごい好きだし、エチオピアはなんか酸っぱすぎるっていうか。

はいそこ!
コーヒーになまじ詳しい人ほどよく陥りがちなのですが、どんな豆であれ焙煎度によって風味も香りも味も酸味も苦味も大きく変わります。違う飲み物レベルで!その話を抜きにして、コーヒーの好き嫌いを決めちゃうのは勿体無いですよ。

はい、すみません。
私は、好きな産地を見つける前に、好きな焙煎度を見つける方が、実は自分の好みの味に辿り着きやすいと思っています。そのためのヒントをこの記事では書いていくので、ぜひ読んで、自分にとって丁度いい焙煎度のコーヒーを探してみてください!
それぞれの違い

一番大事ですよね。味の違いが一番気になるところだと思います。
大きく変わるポイントは3つあります。
酸味&苦味のバランスが変わる
焙煎度によって一番変わるのは、酸味と苦味のバランスです。
コーヒー豆は例外なく、浅煎りほど酸味が強くなり、深煎りほど苦味が強いです。
これはトレードオフの関係にあって、酸味が多いほど苦味は少なく、苦味が多いほど酸味は少なくなります。中煎りだとその中間ですね、酸味と苦味のバランスの取れた味わいになります。なのでコーヒーを飲んだ時「酸っぱすぎる」と感じたら、あなたにとって焙煎が浅すぎ、逆に「苦すぎる」と感じれば、深すぎるということです。
最初に海丸くんが言っていた「苦くないコーヒー」と言うのはここですね。浅煎りのコーヒーは、苦くないんです。
ちょっとだけマニアックな話になりますが、舌の働きだけ注意です。
味のメカニズムですが、舌についている味蕾(みらい)という感覚受容器官が苦味や酸味、甘味、塩味、旨味に反応することで、それを味として脳が認識します。ただし、それぞれの許容値を持っており、強すぎる味が入ってくると処理が追いつかず、他の味を処理する器官に仕事が横流しされます。
例えば、旨味が強すぎた場合。旨みに反応する器官がいっぱいいっぱいになり、苦味の担当に仕事を投げます。すると、脳がキャパオーバー分の旨味を苦味と誤認するということが起きるのです。豚汁で出汁を取りすぎる(過剰な旨味)と苦くなる、というのはよく出てくる例ですね。「ためしてガッテン 豚汁」で検索してみてください。
これは飲む側というよりも焙煎する側の心掛けなのですが、、酸味が強すぎて、逆に苦いコーヒーができることもあります。その場合は単純に「焙煎が浅い=苦くない」ではないという例外があることも覚えておいてもいいかもしれません。
口当たりが変わる
これもポイントですね。深煎りにするほど口当たりが重くなっていきます。
これ、原因はメイラード反応だと言われています。メイラード反応は、約150℃以上の温度で、アミノ酸と糖が合わさって起こる化学反応です。コーヒーの複雑な香りを作り出すのに必須と言われるこの反応ですね。ここでメラノイジンという物質が形成されるのですが、それが増える(=焙煎時間が長くなる=深煎り)ことにより、粘度が増すそうです。
あとは、油ですかね。深煎りだと熱で豆の細胞がより壊れるので、中から油が染み出してきやすくなります。(表面がテカテカした豆って見たことありますかね?あれです。)それが口当たりを重くしているというのもありますね。
ただ口当たりに関しては、抽出方法とかでも結構変わってくるので、調整はできます!
香りが変わる
香りも大事ですね。同じコーヒー豆であれば香りも似てはいるのですが、焙煎度によって結構変わるので説明します!
まず、ざっくり。
浅煎りは柑橘系や花のようなスッキリした香りが際立ち、中煎りはりんごやベリー系などの甘いフルーツの香り、深煎りはチョコレートやキャラメルのような香ばしい香りが強調されます。深煎りは豆の種類を問わず、焙煎独特の香りがついてくるので、香ばしい、少し焦げたような香りがあります。一方で浅煎りはコーヒー豆由来の、酸を纏った香りが強調されますね。
なので、お客さんから「酸味がなくて飲みやすい」と好評のブラジル:Recreio農園のコーヒーも、浅煎りではオレンジのような酸味や甘さを感じますし、「強めの酸味とスッキリした柑橘の香り」が特徴のエチオピア:Yirgacheffeのコーヒーも深煎りにすると、酸味が消えていちごチョコレートのような感覚が出てきます。浅煎りほど明るく、深煎りほど重い感じの香りがする、と覚えていただければと。
実は、香りの絶対量は焙煎が深くなるほど減っていきます。なぜなら焙煎を進めるほど、コーヒーの香りを作り出す根幹「酸」がメイラード反応によって分解され、失われていく時間が伸びるからです。深煎りになるにつれて酸味が減っていくのも同じ理由ですね。
ちなみにメイラード反応は酸と糖の熱分解なので、(そしてキャラメル化という糖の熱分解反応も焙煎の終盤で活発になるので)甘さも減っていくと考えられています。
ただし甘さは単純な糖分量だけでなく感覚的なところもあって、「どれが甘く感じるか」は一概に焙煎度とリンクしません。例えば深煎りのチョコレートのような香りは、実際甘いかどうかは別として甘いと錯覚したりもします。逆に甘みがあっても、酸味が強かったりすると感じにくかったり、、。グレープフルーツとか、酸っぱいと甘み感じづらいですよね。

以上が、焙煎度によるコーヒーの違いの説明でした!
お好きなコーヒーを見つけるのに、何かお役に立てたら幸いです。
もっと詳しく知りたい方はこちらへどうぞ!
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